作文の体操

小説を10月までに書くぞと宣言してそれから一文字も書いていない。もちろん毎日ツイッターでどうでもいいことを呟いているし、平日は仕事で何も書かない日というのはない。

そもそもなぜ小説を書くことになったかといえば知り合いに小説を書いてほしいと言われた。私の書くものが非常に気になるので読みたいと言われた。私は自分がつまらない人間であるだけでなく文章が下手くそなので反発を感じると同時に良い気持ちになった。人から興味を持たれるのは嬉しいし、それ以上に自分の欠点を自分より知っている人はいないだろうという優越感がたまらない。小説を書くとしてもできればこの人の気持ちを裏切るようなものが書きたいと思った。私が面白いと思っていること、私が好きなこと、欲しいものはこの人に理解できるわけがない。本当に理解できているなら私が書いたものなど読みたいと思うわけがない、とたかをくくっている。

普通は小説というのは興味を持ってもらうことが一番難しいのであって、最初からあなたの書いたものが読んでみたいと前提されているのは大変幸運なのではないかと思う。こんな好機を逃すべきではない。締め切りがないと書けないので10月までに書きますと、私は約束された読者に宣言した。

小説を書いたことは一度もない。書き方が分からない。まずは小説を分析的に読もうと思った。あるときは漫画を分析的に読んで、漫画のコマの大きさはだいたい一ページでこれくらいになっているとか分かった気になったことがある。分析的に読む以前に小説を読む量が力尽きた。